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分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業(自然科学研究機構) 分子研リポート2008 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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(1)

各種事業 99

5-3 分野間連携による学際的 ・ 国際的研究拠点形成事業 (自然科学研究機構)

5-3-1 概要

自然科学研究機構では,新分野創成型連携プロジェクトとして「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業」 を行っている。これは,機構内で2月に公募され,審査によって採択課題が決められ,年度末に評価を行っている。

分子科学研究所からは,研究所が主体的にまとめている「巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中 核拠点の形成」,5機関共同で進めている「イメージング・サイエンス」および「自然科学における階層と全体」プ ロジェクトに多くのメンバーが参加している。またこの他に,少人数のグループ研究が走っている。「自然科学にお ける階層と全体」では,昨年度の国際会議開催に続き,第4回シンポジウムを蒲郡のホテル竹島で開催した。実験(観 測)と理論(シミュレーション)の双方から様々な発表がなされたが,統合的な課題として「ミクロとマクロを繋ぐ 階層連結のシミュレーション科学」の重要性が認識され,今後これを中心とした活動の検討を進めることが合意された。

5-3-2 巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中核拠点の形成

本プロジェクトは,方法論の開発から巨大計算にいたるまで,分子・物質の第一原理から出発した計算科学研究の 中核拠点を形成し,物質科学および分子・物質を核とするナノサイエンス,バイオサイエンス等の自然科学の諸分野 における世界の主導権を獲得することを目的としている。また,分子科学,核融合科学,生命科学,天文学の異なる 自然科学階層に属する各分野の異なる方法論を共有・融合することにより,特に大規模複雑系を構成する分子・物質 に対する計算科学研究にブレークスルーを実現し,それぞれの分野の方法論に新機軸をもたらし,学際的新分野を形 成することも目指している。

2008年度,連携研究,ワークショップ,人材育成等について以下の活動を行っている。 (1) 連携研究

連携推進課題(3課題)(*責任者)

・巨大計算に向けた粒子シミュレーション手法の開発(岡崎

,江原,平田,永瀬,斉藤,核融合研・堀内,天 文台・富阪,東大・北尾,産総研・森下)

・分子多量体形成と生理機能(基生研・望月

,生理研・永山,分子研・岡崎,平田,東大・北尾)

・物質・電磁場相互作用系のシミュレーション(分子研・信定

,米満,斉藤,核融合研・中島,東北大・森田) 連携課題(15課題)

・分子の励起状態と化学反応に関する理論的研究(分子研・江原)

・分子動力学計算に基づく凝縮系ダイナミックス(分子研・斉藤)

・ナノ分子の量子化学計算(分子研・永瀬)

・電磁場と露に相互作用した多電子ダイナミックスの解析(分子研・信定)

・3次元 R IS M による分子認識(分子研・平田)

・量子化学の先進的分子モデリング手法開発と多参照電子状態の解明(分子研・柳井)

・量子古典結合多粒子系の非平衡集団運動制御の理論(分子研・米満)

・プラズマ大規模シミュレーションのための効率的並列計算手法開発(核融合研・堀内,中島)

・概日リズム振動の生体分子反応シミュレーション(基生研・望月)

・ミトコンドリアの energetics simulation(生理研・永山)

・輻射輸送計算を用いた星間化学進化の研究(天文台・富阪)

(2)

100 各種事業

・界面和周波発生分光の理論計算手法の開発(東北大・森田)

・第一原理分子動力学計算による液体及びアモルファスのポリモルフィズム(産総研・森下)

・生体超分子の立体構造変化と機能(東大・北尾)

・両親媒性分子水溶液の大規模分子動力学計算(名大・岡崎) (2) ワークショップ

・第5回連携シンポジウム 2 月 16 日

・分子・物質シミュレーション中核拠点セミナー 第 30 回〜第 34 回

・討論会,学会の共催

 理論化学討論会,分子シミュレーション討論会,理論化学シンポジウム (3) 人材育成

・第4回分子・物質シミュレーション中核拠点形成事業人材育成講座

 「分子シミュレーションスクール—基礎から応用まで—」 12 月 22 日 –25 日 (4) 実施体制

・機構内11グループ 理論・計算分子科学研究領域,天文台,核融合研,生理研,基生研

・機構外4グループ 東北大,産総研,東大,名大

5-3-3 イメージング・サイエンス

(1) 経緯と現状

研究所の法人化に伴い5研究所を擁する自然科学研究機構が発足し,5研究所をまたぐ新研究領域創成の一つのプ ロジェクトとして「イメージング・サイエンス」が取り上げられることとなった。以下に,その経緯と現状について 述べる。

平成16年度に機構が発足した後,研究連携室で議論がなされ,機構内連携の一つのテーマとして「イメージング・ サイエンス」を立ち上げることが決定された。連携室員の中から数名の他に,各研究所からイメージングに関連する 研究を行っている教授・准教授1〜2名が招集され,「イメージング・サイエンス」小委員会として,公開シンポジ ウムその他プロジェクトの推進を担当することとなった。

平成17年8月の公開シンポジウム(後述)の後,小委員会において,本プロジェクトの具体的な推進について議 論を行った。この機会に,各研究所が持つ独自のバックグラウンドを元に,それらを結集して,広い分野にわたる波 及効果をもたらすような,新しいイメージング計測・解析法の萌芽を見いだすことが理想,という議論がなされた。 それに向けた方策として,機構内の複数の研究所にまたがる,イメージングに関連する具体的な連携研究テーマをい くつか立てる案を連携室に提案したが,予算の問題等もあってこれは実現しなかった。

現状では,機構の特別教育研究経費「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成」の新分野創成型連携プロジェ クトの項目として,イメージングに関連した研究所をまたがる提案が数件採択されている(「イメージング・サイエン ス—超高圧位相差電子顕微鏡をベースとした光顕・電顕相関3次元イメージング—」など)。これが上述の提案に 代わるものとして,「イメージング・サイエンス」に係る具体的な機構内連携研究を推進している。平成20年度には, 岡崎統合バイオサイエンスセンター(生理研)の永山教授を中心に再編された小委員会が招集され,国立天文台に設 置された一般市民向け立体視動画シアター「4D 2U」(4-dimensional to you)を利用した,広報コンテンツ作成に関する 検討が開始された。5研究機関がもつイメージングデータを元に,機構の研究成果を一般市民向けに解説する立体動 画集の制作を目論んでいる。同時に,イメージングを中心とした機構内連携の新たな展開について議論を行っている。

(3)

各種事業 101 (2) 実施された行事

このプロジェクトの具体的な最初の行事として,各研究所のイメージングに関わる興味の対象と研究ポテンシャル を,5研究所が互いに知ることを目的として,「イメージング・サイエンス」に関する公開シンポジウムを開催する こととなった。

平成17年8月8日−9日に,「連携研究プロジェクト Imaging S cience 第1回シンポジウム」として,公開シンポジ ウムが岡崎コンファレンスセンターで開催された。このシンポジウムでは,天文学,核融合科学,基礎生物学,生理学, 分子科学におけるイメージング関連研究に関する,機構内外の講師による16件の講演,及び今後の分野間連携研究 に関する全体討論が行われた。参加者は機構外36名,機構内148名,大学院生80名,合計264名を数えた。また, 講演と全体討論の内容は,175 ページのプロシーディングス(日本語)としてまとめられ,同年12月に発行された。 この機会によって機構内のイメージング・サイエンス関連研究に関する研究所間の相互理解が進み,その後の機構内 連携研究の推進に相当に寄与したと考えられる。

平成18年3月21日には,立花隆氏のコーディネート,自然科学研究機構主催で「自然科学の挑戦シンポジウム」 が東京・大手町で開催された。これは,一般の観客を対象に,機構の研究アクティビティーをアピールすることを目 的として,立花氏が企画して実現したもので,当日は約600名収容の会場がほぼ満席となる一般参加者があった。こ のシンポジウムの中で,「21世紀はイメージング・サイエンスの時代」と称して,イメージングを主題とするパネル ディスカッションが組まれた。ここにはパネラーとして「イメージング・サイエンス」小委員会委員を中心とする講 師によって,5研究所全てから,各研究所で行われているイメージング関連の研究の例が紹介され,最後に講師が集 まりパネルディスカッションが開かれた。このシンポジウムの記録の出版は諸々の事情で遅れていたが,平成20年 度にクバプロから出版された。

平成18年12月5日−8日には,第16回国際土岐コンファレンス(核融合科学を中心とする国際研究集会)が核 融合研究所主催で土岐市において開催された。この会議ではサブテーマが“ A dvanced Imaging and Plasma D iagnostics” とされ,プラズマ科学に限らず,天文学,生物学,原子・分子科学を含む広い分野におけるイメージング一般に関す るシンポジウムとポスターセッションが企画された。分子科学研究所からも,数名が参加し,講演及びポスター発表 を行った。また平成19年8月23日−24日には,「画像計測研究会2007」が核融合科学研究所一般共同研究の一環 として,核融合科学研究所において開催された。平成20年11月10日−13日には,第39回生理研国際シンポジウ ムとして,“ F rontiers of B iological Imaging—S ynergy of the A dvanced T echniques” が開催され,機構内のイメージングに 関わる研究者も数名(分子研1名)が講演を行った。

5-3-4 自然科学における階層と全体

自然科学における5分野を包括する自然科学研究機構として,その学際領域研究の可能性を探る「階層と全体」プ ロジェクトがスタートして4年目を迎えた。5研究所の研究内容の理解から始まり,それぞれの専門分野における最 先端の研究を理解しあうという過程を経て,徐々に「自然科学における階層と全体」を考え,新分野としての可能性 を探るという段階に至った。本年度は,第4回目のシンポジウムを開催し,内外の研究者14名の講演があった。

生理学研究所の重本教授は,「分子動態とシナプス形態から行動変化まで—記憶の長期定着に関わる階層と全体」 という講演の中で,小脳の運動学習のメカニズムと機能不全に対する脳の他部位による補償回路の存在を指摘され, 機能発現においても階層を越えた相互連結機構が存在する事を示した。望月教授は,遺伝子発現の定常状態数の上限 の決定問題において,ウニの初期発生に関わる遺伝子ネットワークの解析から,重要な少数の遺伝子が抽出されるこ とを紹介し,遺伝子の相互作用において細胞毎に異なる遺伝子活性状態が形成されることを指摘した。慶応大学の中

(4)

102 各種事業

迫雅由教授は,個体の中の細胞活動とその素過程を担う蛋白質などの集合体間の階層連携について述べ,現在は蛋白 質分子の高解像度可視化が可能となり,ミクロレベルにおける環境媒体と分子との関わりとマクロレベルにおける分 子集団の離合集散との階層関係が明らかになってきた状況を紹介した。分子研の平田教授は,R IS M /3D - R IS M による 蛋白質中の空孔に束縛された水分子の「検出」の例に見られる「分子認識」研究が,蛋白質による選択的イオン結合, 酵素反応,アクアポリン水チャンネルなどへと展開するという構想を紹介し,「生命階層」と「物質階層」の境界で 本質的な役割を担う「分子認識」研究の重要性を説いた。東工大の木賀教授は,天文学的な遺伝子情報の組み合わせ から偶然と必然問題を議論し,人工遺伝子暗号の構築・設計を紹介し,「生命のサブシステムを組み合わせて階層を 登 る 」 と い う ス ト ー リ ー を 述 べ た。 北 大 低 温 化 学 研 究 所 の 山 本 教 授 は, 自 然 の 階 層 性 問 題 研 究 の 歴 史 を G l ashow, A nderson,坂田昌一,エンゲルスの議論を例に紹介し,現代の科学の多様化と専門(おたく)化を指摘,全体像把握 の困難というジレンマに陥った現状打破の必要性を説いた。また,ダストから惑星形成への進化過程の総合的描像の 確立へのアプローチを紹介した。三重大学の阿部教授は,地震活動に於ける af tershoc k 即ち余震の理解が,臨界現象 における長距離相関との類似性を有することを指摘し,本震とそれに付随する余震の時間発展が地震複雑ネットワー ク表現によって初めて理解可能な事,この複雑系の科学において階層構造と全体との関係を捉える重要性を強調した。

2日目は,シミュレーション科学を中心とした講演が主体であった。核融合科学研究所の宇佐見教授は,階層横断 現象として理解される磁気リコネクション問題を,連結階層モデルを用いて領域分割法によるインターフェース領域 挿入条件を議論し,この連結階層モデルによる磁気リコネクション理解の検証と今後の展開を紹介した。国立天文台 の桜井教授は,太陽コロナの発生が表面のガスの対流運動に起因するという波動説に対し,微小フレア爆発の連結集 合の結果がコロナであるとする self-organized critically モデルを対比させた。これは,コロナという大きなスケールの 現象が微小フレアという小さなスケールの現象との連結の解析によって理解されることを紹介した。京都大学の松岡 教授は,心臓の心筋細胞収縮は血液を全身に送る重要な現象であるが,これは,複雑な蛋白相互作用によって調節さ れる。これを,システムとしての心筋細胞制御機能を理解する為,コンピューター上に心筋細胞の機能の包括的シミュ レーションを行う「K yoto Model」を構築し,これが細胞内イオン濃度変化収縮,細胞容積調節,ミトコンドリア A T P 産生と A T P ase による消費,β 受容体シグナル伝達系,等々の各過程を包括的に再現するものであり,心臓という大 きなシステムの主要活動を理論的に再現する先進的取り扱いであることを示した。海洋研究開発機構 地球シミュレー タセンターの廣瀬グループリーダーは,「摩擦動力学の連結階層シミュレーション」について雲の発生,燃焼流体, プラズマ,あるいは摩擦破壊の取り扱いにおいて,ミクロとマクロを結合するインターフェース問題が重要であり, 原子間問相互作用をマクロな系の連続体力学シミュレーションに反映させる方法論について議論した。一方,核融合 プラズマ現象は時間的空間的な多段階のスケールにおける非線形相互作用を含む極めて複雑なシステムであるが,核 融合科学研究所の 教授は,この multiscale plasma simulation への projective integration method の導入を紹介した。 この後,昼食をとりながら,個別にこのプロジェクトの今後の展開等について議論し,最後の総括的議論に備えた。 午後に入って,東京大学の増田教授は,「複雑なネットワークの構造・機能」という題名で,ネットワークのデータ 構造が,スケールフリー性,階層性,隣接点間の相関といった特性を有し,データが属する分野に依存しないことを 指摘した後,複雑ネットワークの医学,脳科学,生物学への応用についての研究事例を紹介した。最後の講演は中央 大学の松下教授による「複雑系の構造,統計,ダイナミックス」についてであった。地球環境を例とした,要素間の 複雑な相互作用のみの理解からは予測出来ない多様な特性の自己組織的発現について紹介した。

最後に,本プロジェクトの今後の展開についての総括的議論が行われ,今回のシンポジウムの中で,新分野創成に 繋がるテーマとして自然科学の階層を繋ぐ理論的理解の必要性とこれを前進させるための「階層連結のシミュレー ション科学」が浮上して来た事が認識され,最終年度にはこの問題に絞ったシンポジウムの開催が提案された。

参照

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